高血圧 - 運動療法
適度な運動を習慣にすると血圧は下がる
血圧を下げるために、食事改善と並んで重要なのが、体をよく動かすことです。日ごろよく運動している人は、そうでない人より心筋梗塞(しんきんこうそく)を起こしにくい、運動を続けると血圧が下がるなど、運動効果を証明する研究報告は数多くあります。運動には、血庄を上げる体内物質を減らして、血圧を下げる体内物質を増やす効果があることがわかっています。また、エネルギー消費による肥満解消効果や末梢の血管が広がるなど、さまざまな要因が血圧の低下につながります。さらに、精神的なストレスの発散にも役立ちます。運動により、糖尿病を引き起こすインスリン抵抗性が改善されることも、よく知られています。
運動を"習慣にする″ことが大切
運動をしている最中は、交感神経が働くので、血圧は一般に上がります。しかし適度な運動を長く続けていると、だんだんと血圧は下がっていきます。運動をすればすぐに、血圧が下がるわけではなく、長く継続していくことが大事なのです。長く続けていくには、運動をライフスタイルに組み入れて、習慣化していくことが必要になります。
運動を始められる体調かどうかを医師に相談する
血圧を下げるためには運動がよいからといって、誰でもすぐに運動を始めてよいというわけではありません。血圧の値が比較的軽度で、心肥大(しんひだい)や狭心症、脳卒中、たんぱく尿などの合併症がない人は、すぐに運動を始めても、それほど問題はありません。しかし、すでに心臓や腎臓などに障害が出ている場合は、運動を始める前に、医師の指導が必要です。また、狭心症や不整脈などがある人は、きちんと検査を受けたうえで、運動が許される範囲を決めてもらう必要があります。少しでも不安がある場合は、かかりつけ医に相談してから、運動を始めましょう。
突然、激しい運動を始めない
いくら体によいからと、ふだんあまり運動していない人が、いきなり激しい運動をするのは、たいへん危険です。体力以上の運動を行ったために、運動中に心臓発作などを起こして突然死する人もいます。そこまでいかなくても、膝や腰などの関節や筋肉などを傷つける可能性もあります。最初は、自分のできる範囲でゆっくりと運動していくことが大切です。運動を続けて体力がついたら、少しずつ運動強度を上げていきます。
▼運動を始める前のチェックポイント
・狭心症・心筋梗塞・不整脈などの心臓病がないかどうか
→心臓病があれば、それに見合った運動量を処方してもらう。
・糖尿病や肝臓病がないかどうか
→糖尿病があれば臓器障害の程度も調べる。
・ぜんそく、慢性閉塞性(へいそくせい)肺疾患など呼吸器の病気がないかどうか
→どの程度の運動で息切れなどの症状が出るかの見極めが必要になる。
・骨や関節の病気がないかどうか
→特に高齢者は膝の痛みを訴える人が多いので、注意が必要。
・どのような薬をのんでいるか
→運動することで血圧が下がりすぎることもあるので、注意が必要。
ある程度長く続けられる有酸素運動が効果的
ひとくちに運動といっても、大きくは有酸素運動と無酸素運動に分けられます。無酸素運動は、短距離走や重量挙げのように、瞬間的に強い力を出す運動です。息をこらえて行うため、血圧が著しく上がります。有酸素運動は、マラソンやウオーキングのように、長く持続する運動をさします。血圧を下げる目的で運動する場合は、有酸素運動が適しています。有酸素運動の場合には、最初こそ血圧は多少上がりますが、その後しばらくすると、血圧は安定してきます。運動を長く続けていると、筋肉の血流が増えて、末梢での血管抵抗が下がるからです。
誰でも手軽にできるウォーキング
有酸素運動のなかでも、誰でも手軽にできる運動として特におすすめするのは、ウォーキングです。ジョギングなどのようにけがの心配が少なく、誰でも手軽に始められるからです。膝が悪い人や肥満のある人は、プールで水中ウォーキングを行うと、膝への負担が少なくてすみます。そのほか、サイクリングやラジオ体操、エルゴメーター(固定式自転車)、水泳などもよいでしょう。自分が続けやすいものならば何でもかまいません。
自分が"ややきつい"と感じる程度が最適
あまりきつい運動を行うと、けがの原因になり、長続きもしません。かといって、ごく軽い運動では、血圧を下げる効果は期待できません。最適な運動強度は、最大酸素消費量の50%程度の運動といわれています。最大酸素消費量とは、その人が耐えられるギリギリの強度です。運動を行うと脈拍が速くなりますが、最大酸素消費量は、もうこれ以上運動できないというときの、最大脈拍数と考えてかまいません。体力や年齢によって個人差はありますが、最大脈拍の半分というと、1分間に100~120回くらいになります。その程度の脈拍になる運動強度がもっとも適しています。脈拍数やボルグスケールを目安にする最適な運動強度になっているかどうかは、脈拍を数えてみればわかります。運動中、または運動直後に数えて、100~120回くらいになっていればベストです。下に年齢別の脈拍数を示したので、参考にしてください。運動をしているときの感覚で、最適な強度かどうかを知ることもできます。運動強度を感覚で示した、ポルグスケールという指標があります。このスケールでいうと、「楽である」「ややきつい」と感じる程度の運動が、もっとも適しています。
▼自分に合った運動の強さの目安を知る
脈拍数
脈拍の測り方
手首の親指側に指を3本そろえて15秒間の脈拍を測る。4倍すれば1分間の脈拍となる。
30歳代120回/分
40歳代115回/分
50歳代110回/分
60歳代105回/分
1日30分程度の運動を毎日行うのが理想的
運動は、できれば毎日行いたいものです。ウォーキングなどの有酸素運動を、毎日30分程度行えば、大きな運動効果が期待できます。生活習慣のひとつとして、ライフスタイルに組み込むことができればベストでただ、働き盛りの多忙な人には、なかなかむずかしいかもしれません。そのような人も、せめて週に3回以上は行うようにしてください。週末にはゴルフをしているからと安心してしまう人もいるでしょうが、週3回以下だと、運動効果はあまり望めません。また、週に3回程度の場合は、できれば1時間くらい運動したいものです。
少しずつでも運動量を増やす
特別に運動の時間をつくったり、スポーツジムに通うだけが運動ではありません。日常生活にも、運動を行うチャンスはたくさんあります。エスカレーターやエレベーターの利用をやめて階段を歩けば、よい運動になります。ひと駅前で電車やバスを降りて、早歩きで出勤したり帰宅したりするのもよい方法です。1日30分の運動が無理でも、日常生活のなかで、少しでも体を動かす時間を増やしましょう。
▼運動を続けるポイントは?
・周囲の人に運動を始めることを伝える
・家族や友人といっしょに運動する
・歩数計を使ってどのくらい歩いたかを記録する
・中断してしまっても、週明けからまた始める
・ちがう道を歩くなど、運動メニューに変化をつける
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