高血圧 - 食塩制限の基本
高血圧の食塩制限の基本とは?
長寿の人の食事は塩分が少ない
近年の研究で「食塩をとり過ぎると、高血圧だけでなくがんの危険性も高まる」ことや、「長寿の人の食事は1日の塩分が6g前後のケースが多い」ことなどがわかってきました。そのため米国では、がんや高血圧を予防するために「食塩を1日6g以下にする」のを目標としています(食塩の最低必要量は1日1.3g以下)。ただし日本では摂取量が多いので、健康な人なら「食塩を1日8~10gにする」のが現実的な目標と言えます。また"すでに高血圧になっている人″は、1日8~6g(軽度制限)から5~4g(中等度制限)、3~0g(高度制限)まで、状態に応じてさらに厳しい塩分制限を行います。このうち1日3g以下の制限は、とくに重症の高血圧や腎臓の重い障害などをともなっている一部のケースを除き、通常はあまり行われません。また1日5~4gの制限でも、日本人にはかなり負担になります。
食塩制限に敏感なタイプも多い
この場合、高血圧には「食塩制限に敏感に反応するタイプ(食塩感受性)」と、「反応が低いタイプ(食塩非感受性)」があることが近年の研究(藤田敏郎氏ら)でわかってきました。その原因ははっきりしていませんが、食塩に敏感なタイプは、食塩中のナトリウムを尿に排泄する腎臓の働きが低いものとみなされています。健康な人の腎臓は1日に最大50gほどのナトリウムを排泄できるのに、高血圧の人は、食塩への反応が低いタイプでも10~15g程度しか排泄できず、食塩に敏感なタイプはさらに排泄能力が低いと言われています。そのためこのタイプ(食塩感受性)は食塩をとり過ぎると体内にナトリウムがたまりやすく、その影響で血液その他の体液(細胞外液)が増えて血圧が上昇してしまいます。逆に、きちんと食塩を制限をしてナトリウムの量を減らせば、たいていは血圧がうまく下がり始めます。つまり食塩の影響が血圧にストレートに出るのが特徴で、軽症の高血圧なら、薬を使わず1日6~4gの食塩制限だけで治療できることもあります。
食塩感受性は血圧が下がりやすい
このような食塩感受性のタイプは、肉親に高血圧の人がいる女性の高齢者や、腎臓病になったことがある人などに多く、本態性高血圧の30~40%を占めるとみなされています。ただし、食塩に敏感かどうかをあらかじめ調べる方法はないので、軽症の高血圧なら最初は1日8g以下の制限から始め、血庄がよく下がれば、医師と相談のうえ6~4gの制限に進みます(薬を使わずに治療できる)。この場合、食塩に敏感なタイプでも高齢の方は1日6~4g以下に制限するとなかなかうまくいかず、がまんして続けてもストレスがたまってかえって悪影響が出る恐れがあります。ですからこのような方は、8g以下の制限を続けることをお勧めします。一方、食塩への反応が低いタイプは血圧がよく下がらず、たとえ1日5~4gの制限を続けても、最大血圧が10mmHgも下がらないのがふつうです。しかし、前述のように、食塩の制限を続ければ血圧を下げる薬(降圧剤)がよく効くようになり、(医師と相談のうえで)薬の量も減らせます。このような方も8g以下の食塩制限を続けることが大切ですが、高齢の方はやはり負担感が強まりがちです(その場合は10~8gの制限を行う)。
▼「食塩感受性」の人の特徴は
・ナトリウムを排泄する腎臓の働きが通常より低下している
・食塩の影響が血圧にすぐ現れる
・食撮制限の効果が大きい
・高血庄の遺伝的な素因が強い人や女性の高齢者、腎臓病になったことがある人などに多い傾向がある
・本態性病血圧の30~40%に存在
減塩料理のコツを知っておく
薄味でもおいしく食べられる
減塩をする場合、料理全体を薄味にすると食事が昧けなくなります。食塩制限を成功させるためには、減塩料理の工夫を覚えて、薄味でもおいしく食べられるようにすることが大切です。
■新鮮な材料を選ぶ
魚や野菜、果物などは味が充実する旬のもの、鮮度のよいものを選ぶと、素材自体のうまみや風味、香りが味わえるので、薄味が生かせます。鮮度の落ちる素材は、味を補うために濃い味つけになりがちです。
■酸味や香りを上手に使う
お酢やレモン、ゆず、だいたい、カボスなどの柑橘類(ミカン科)の酸味や香りは、塩分の薄さを補って料理の味をひきたてます(献立例→煮物にすだち・揚げ物にレモン・焼き物に梅酢・蒸し物にみぞれ酢など)。
■香辛料やスパイスを利用する
カレー粉やわさび、唐がらし、しょうがなどの辛味の香辛料、スパイス、にんにく、香味野菜(玉ねぎ、パプリカ、タイムなど)、ハーブなども献立に上手に取り入れて、料理の味にメリバリをつけると食欲をそそり、おいしく食べられます(献立例→妙め物・煮物・しょうが焼きなど)。
■だしは濃いめにとる
だしは、昆布やかつお節、煮干しなどの天然のうまみを引き出し、濃いめにとると、薄味の料理でもコクが出ておいしくなります。だしをきかせれば、煮物なども薄味ですみます(献立例→肉じゃが・里いも煮など)。
■砂糖の味つけはひかえめに
砂糖と塩で甘辛く煮る料理は、砂糖を増やすと塩分も多くなりがちです。薄味料理に慣れるために砂糖やみりんを少量にすれば塩味が強まり、食塩の料を減らせます(献立例→和風の煮物・鍋料理・魚の煮つけなど)。
■加工食品は調味料として使う
ハム、ベーコン、ウインナソーセージ、チーズ、かまぼこ、はんぺん、ちくわ、佃煮などの塩分が多い加工食品は一種の調味料として扱い、食べる量を抑えましょう(献立例→野菜妙め・野菜スープ・ジャーマンポテトなど)。加工度が高い食品ほどナトリウムが増えて、他のミネラルが減ることが多いのでよく注意しましょう。
■調味料は計って使う
減塩料理では、だいたいの見当で味つけするのは禁物です。ひと振りのしょうゆでも小さじ1杯程度はあり(ソースなら大さじ1杯程度)、食塩に換算すると1gになります。必ず調味料の量を確かめて使い、薄味を舌で覚え、慣れてください。
■減塩調味料や粗塩も利用する
減塩しょうゆその他の減塩調味料も便利ですが、使い過ぎにならないよう注意しなければなりません。精製度が低い租塩は、塩化ナトリウムが95%程度のものが多いので、ふつうの精製塩よりナトリウムが少なく、他のミネラル成分も含んでいますが、やはり使用量を増やすのは禁物です。合わせじょうゆ(だし汁1+しょうゆ1)や酢じょうゆ、ごまじょうゆ、しょうがじょうゆなどを使うのも"おいしい減塩″につながります。
■食卓に調味料の容器を置かない
食卓にしょうゆ、ソース、食卓塩などの容器が置いてあると、習慣でつい使ってしまい、知らないうちにかなりの塩分をとってしまいます。食べるときに使うしょうゆやソースは、あらかじめ必要最小限度の量を小皿にとっておいて硬いましょう。
■調味料は料理の最後に使う
だしだけでも食材のうまみが引き出せるので、主な調味料は最後に使うようにして量を抑えましょう。たとえば煮物なら、最初からしょうゆを入れて煮立たせず、だし・酒・みりんで下味をつけ、材料が十分なじんだら仕上げにしょうゆを使います。また炒めたり、焼いたり、揚げたりしてから味つけすると、材料の表面に味がつきやすいうえ、材料からうまみが逃げださないので、少ない塩分でも食べやすくなります(献立例→マリネ・中華炒め物・南蛮漬など)。
■料理の組み合わせを工夫する
煮る・焼く・蒸す・揚げる・炒める・ゆでるなど、調理法の違う献立を組み合わせて、薄味でもいろいろな味を楽しめるように工夫しましょう。そのほか、「漬物は一夜漬けにする・あえものはよく水切りをする」などの工夫も知っておくとよいでしょう。なお、外食やインスタント食品は塩分過剰のものが多いので、できるだけ避けたほうが無難です。こうした減塩対策は家族全員で続け、家族みんなの食生活を改善することが大切です(一人だけ家族と違う減塩料理にすると、食事が楽しくなくなり、食事療法が負担になりやすい)。
▼調味料に含まれる食塩の量は?
| 調味料 |
大さじ1杯の食塩量 |
甘みそ
減塩しょうゆ
うす口しょうゆ
こい口しょうゆ
マヨネーズ(卵黄型)
トマトケチャップ
フレンチドレッシング
ウスターソース
とんかつソース
バター
固形コンソメ
めんつゆ(ストレート)
カレールー |
1.0g
1.5g
2.9g
2.6g
0.3g
0.6g
0.5g
1.3g
1.0g
0.2g
1.7g(1個4g分)
0.6g
2.0g(1人前20g) |
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