高血圧 - 生活習慣病の"王様"
日本では3千万人以上が高血圧!
血管の障害が静かに進んでいく
高血圧はよく見られる病気ですが、欧米では以前から「サイレント・キラー(静かなる殺人者)」と呼ばれて恐れられてきました。高血圧は目立った自覚症状がないのが特徴で、油断して適切な治療をしないとあちこちの血管がどんどん傷んで動脈硬化が"静かに″進み、やがて脳卒中や心臓病、腎臓病などの危険な病気(合併症)がひきおこされます。そのため、高血圧の人は「知らないうちに致命的なダメージを受けていた」ということが多く、その死亡率は同年齢の健康な人の3倍に達します。欧米の「静かなる殺人者」という呼び方は、高血圧のそのような特徴をよく示しています。
40歳以上の3人に1人は要注意
わが国では高血圧になる人が昔から多く、高血圧が要因となる脳卒中(脳血管障害)が長い間日本人の死因の1位を占めていました。日本人に高血圧が多いのは、塩分のとり過ぎの影響がかなりあるとみなされていますが、近年は中高年の人口が急増したため病院で高血圧の治療を受ける患者さんがさらに増えています。最近の調査では、治療を受けていない人も含めると、全部で3500万人ほどが高血圧になっていると推測されています。つまり、40歳以上の日本人の「2~3人に1人は血圧が高い」ということになります。
食事対策で大きな効果が得られる
軽症の高血圧でも油断は禁物
高血圧は、"体に悪い毎日の生活習慣"が大きな要因になります。いわゆる「生活習慣病(成人病)」の一種ですが、糖尿病やがん、心臓病、脳卒中などの他の生活習慣病より患者さんの数が極端に多く、その点では生活習慣病の"王様″と言えます。近年は重症の高血圧が減少したものの、その一方で、血液中の脂質が異常に多い高脂血症や糖尿病などの他の生活習慣病をともなっているケースが増え、新しい間題が生じています。いずれにせよ軽症の高血圧でも危険なことに変わりなく、油断しているといずれ重大な合併症が発生し、後遺症や障害が残って苦しみます。
自分に合う献立をうまく活用する
高血圧の治療は血圧を下げる薬(降圧剤)が中心になりますが、生活習慣の改善が欠かせないのは言うまでもありません。とくに食生活の改善は重要で、軽症の人ならそれだけで血はを正常化できることもあります。食生活の改善だけでは血圧が十分下がらなくても、適切な食事対策と生活対策を続ければ、軽症~重症例まで含めて薬の最を減らすことができます。そのため、副作用の危険性が減るうえ、他の生活習慣病が合併したり悪化するのを防ぐ効果も得られます。食事対策の効果を高めるためには、まず自分の高血圧のことをよく知っておくことが大切です。
最大血圧と最小血圧に注意する
30~40代で血圧が上昇する
血圧は毎分60~70回ずつ変動する
血圧は「心臓から出る血液量と血管の状態」に左右されつつ、心臓が収縮したときに最も高くなり、拡張したときに最も低くなります。心臓は毎分60~70回ずつ収縮運動をしていますが、心臓が収縮したときの血圧を「最大血圧(収縮期血圧)」、心臓が拡張したときの血圧を「最小血圧(拡張期血圧)」と呼びます。最人血圧も最小血圧も個人差がありますが、日本人男性の平均は最大血庄が132.99mmHg、最小血圧が80.3mmHg、女性の平均は127.0mmHgと76.1mmHg前後です。
血圧が上昇しやすい時間帯に注意
最大血圧は年齢とともに上昇し、40代~50代に上昇幅が最大になります。最小血圧も40代ごろまでは年齢とともに高まりますが、次第に上昇が鈍化し、高齢になるとむしろ低下します。ただし、こうした変化はあくまでも平均的な傾向で、中年以降も最大血圧が低い人や、高齢でも最小血圧が高い人などかなり個人差があります。通常、最大血圧と最小血圧は朝から昼ごろまでに最高となり、昼間はその状態が続いて夕方から夜に下がるパターンを繰り返します(1日の時間帯による変動幅は30~40mmHg程度)。こうした変動(血圧の日内変動)は、昼間の活動に合わせた休の自然な反応で、病的なものではありません。
▼最大血圧(収縮期血圧)と最小血圧(拡張期血圧)の年齢別の平均値
| 年齢 |
男性 |
女性 |
| 最大血圧の平均値 |
最小血圧の平均値 |
最大血圧の平均値 |
最小血圧の平均値 |
| 総数 |
132.9 |
80.3 |
127.0 |
76.1 |
| 15~19歳 |
116.1 |
67.3 |
109.8 |
64.4 |
| 20~29歳 |
124.3 |
74.9 |
111.9 |
68.3 |
| 30~39歳 |
126.6 |
79.2 |
116.6 |
72.2 |
| 40~49歳 |
130.6 |
82.0 |
126.1 |
77.8 |
| 50~59歳 |
136.7 |
84.3 |
133.2 |
81.0 |
| 60~69歳 |
141.0 |
84.0 |
138.4 |
80.9 |
| 70歳以上 |
145.6 |
80.5 |
143.8 |
77.8 |
単位:mmHg (厚生省「国民栄養調査」)
健康な人の「正常高値」とは?
血圧は運動や精神状態、気温その他の影響も受けやすく、ふだんからいろいろ変動していますが、そうした変化も、周囲の環境に体を適応させるための一時的な生理現象です。ですから一時的に血圧が上がっても、通常は短時間で正常に戻るので問題はありません。しかし、血圧の調節機能に何らかの異常があるときは、正常範囲を超えた高い血圧がいつまでも続きます。この場合、ふだんの状態の血圧を2~3回以上繰り返して測定し、そのつど最大血圧(収縮期血圧)が130~139mmHgで最小血圧(拡張期血圧)が85~89mmHgなら、「正常血圧だが高めなので要注意」とみなされます。
高血圧と「高血圧症」の違いは?
また、同じように測定して、最大血圧が140mmHgか最小血圧が90mmHg以上ある場合は「高血圧」と判定され、医師の治療が必要になります。ふつう、高血圧の人は最大血圧と最小血圧が両方とも高くなっていることが多いのですが、どちらかだけが異常値を示す人も見られます。とくに高齢者では動脈硬化の影響も強く、最大血圧だけが異常で(収縮期性高血圧)最小血圧は正常という人が少なくありません。こうした例も含めて、高血圧を放置するといろいろな障害が発生してきますが、高血圧による血管や内臓の障害がすでに発生している場合は、「高血圧症」とも呼ばれます。
大動脈と最小血圧の関係は?
心臓の収縮時には、心臓から出た先の大動脈が拡張して血液の一部が動脈内に貯えられます。心臓の拡張時には心臓が送り出す血液量が0(ゼロ)になりますが、このときは大動脈の内部に貯えられた血液が動脈壁の弾力(ゴム風船が縮むときのような力)で送り出されるため、実際の拡張期血圧(最小血圧)はゼロになりません。ところが高齢になると、動脈硬化で大動脈の押力性が低下して血液の送り出しが減るため、最小血圧上がりにくくなるのです。
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