高血圧 - 薬物による高血圧の治療3
血圧が下がってきたので薬をやめて様子をみてよいか?
降圧薬は、高血圧の原因を取り除く性質の薬ではありません。降圧薬をしばらくきちんと飲んだため、血圧のコントロールがよくなり正常化しているので、薬を中止すればまた元に戻って高くなってくるのが普通です。薬を服用して血圧が正常化したということは、その降圧薬が適切である証拠ですから、やめないほうがよいでしょう。いろいろの時間帯で血圧を測ってみて、いつも正常範囲であり、体調もよいので、降圧薬の量を減らすとか、しばらくやめて様子をみたいと思うときは、かかりつけ医とよく相談の上でしてください。このようなときも、家庭での血圧の記録は説得力を増すと思います。
血圧はどのくらいまで下がればよいか?
高血圧の人の予後を脳血管障害と冠動脈性心疾患に分けて評価し、それぞれの危険因子のかかわりから個人の至適降圧レベルを決めています。血圧値が安定するためには血行力学的には「全末梢血管の抵抗を減少させ、かつ心拍出量を変化させない最低の血圧レベルが至適」と定義できます。しかし、当然非薬物療法の併用の効果も加味されますので難しいのです。目標として収縮期血圧を用、拡張期血圧を90以下にするのが妥当であると思われます。また、薬物療法と非薬物療法とを同時に開始したとき、しばしばみられることですが、食事制限、減量、飲酒制限に成功すると薬物の使用量を減らすことができる場合も少なくありません。
降圧薬にはどのような副作用があるのか?
血圧は、これまでに述べたように、心拍出量と総末梢皿管の抵抗によって決まり、これらにさまざまな因子がかかわって、血圧を調節しています。そして、降圧薬はこれらの因子を変化させて降圧するように考えられています。まず、心拍出量を低下させる薬には、降圧利尿薬、β遮断薬などがあり、総末梢抵抗を減少させる薬には、カルシウム括抗薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、α1遮断薬などがあります。降圧薬の種類によって副作用はさまざまですが、主な薬の種類ごとにみた副作用について述べます。
1.降圧利尿薬
・サイアザイド系
・フロセマイド系
・カリウム保持系
サイアザイド系の降圧薬は、長く続けると血中の尿酸値が高くなり、痛風を誘発することがありますので、定期的に尿酸値をチェックする必要があります。また、血中のブドウ糖値を高めるので、糖尿病を誘発することや性機能の衰えがまれにあります。その他、腎臓から尿中にナトリウムとともにカリウムを排泄しすぎて、低カリウム血状態になることがあります。
2.β遮断薬(ベーターブロッカー)
過度に心臓の機能を抑えるため心不全が起こったり、刺激伝導系のブレーキをきかせる作用のため房室ブロック、除脈、気管支喘息などを誘発することがあります。また、末梢血管の循環障害による手足の冷感があります。性機能の衰えを感じる人もときにいます。
3.カルシウム括抗薬
・ジヒドロチラジン系
血管拡張作用による顔面紅潮、熱感、頭痛、頻脈、血圧の下がりすぎを招くことがあります。ジルチアゼムやぺラバミルでは除脈、房室ブロックを招くことがあります。
4.アンジオテンシン変換酵素阻害薬
発疹、から咳、眠気、血清カリウム上昇があります。
5.中枢性α2刺激薬
中枢性の勉刺激薬には眠気、口渇などの副作用のほか、突然に薬を中止すると、不安、動博、急激な血圧上昇をみることがあります。
・α-メチルドパ
起立性低血圧、口渇、抑うつ、時には性欲が衰えることがあります。なお、妊娠中の高血圧治療に安全であるといわれています。以上の、降圧薬には肝障害、腎障害、痛風、白血球減少、心不全、心臓ブロック、糖尿病、性欲減退、うつ病、から咳の出現、顔面紅潮、頭痛などのさまざまな副作用がみられます。薬を服用する前にはなかった症状が現れたらかかりつけ医に伝えることと、血液や尿の検査を三~六か月に一度は受けるとよいでしょう。
6.アンジオテンシンH受容体措抗薬
最も新しく開発された降圧薬で比較的副作用は少ないとされています。作用はアンジオテンシン変換酵素阻害薬に近似しますが、咳が出ないのが長所です。
高齢者の薬物療法で注意することは?
わが国の統計では、65歳以上の集団で約60%が高血圧とされており、外来受診者の中で、全疾患を通じて最も受診率が高いのが高血圧です。一般的に腎臓、心臓などの主要臓器の血流は高い血圧レベルに調節されており、その上それぞれの臓器の自動調節能力は、加齢とともに低下することから、予備能力が少なくなるので臓器循環にとって不利な要因となりえます。さらに、循環の調節能力にも障害が生じるため、血圧は動揺しやすくなり、上がったものは下がりにくく、また下がったものは上がりにくくなる特徴があります。このように、高齢者の高血圧では、収縮期血圧が高くなる収縮期高血圧が特徴的です。60歳、あるいは70歳以上の拡張期血圧も高い患者を対象にした研究では、降圧利尿薬、β遮断薬を使用したものが多く、心血管疾患、特に脳血管障害の発症を抑制することが示されます。いずれの研究でも用いられている薬剤は、降圧利尿薬、β遮断薬、カルシウム括抗薬などです。また、治療の目標としてはあくまでも身体的機能の改善や寿命の延長であり、生活像全体としての研究は現時点では行われていませんので、今後検討されるものと思います。
80歳以上の高齢者でも高血圧の治療が必要か?
以前は高血圧の収縮期血圧はあまり下げないほうがよいという考えがありました。歳をとると、身体の自律神経系や調節の機能が低下し、血圧の動揺も大きくなります。また、体液量が減り、肝臓や腎臓の機能が低下しますので、通常の薬の量で効きすぎたり、副作用も出やすくなります。動脈硬化の強い人は、血圧が下がりすぎると脳循環が減少し、脳梗塞や、痴呆症の原因となるという背景を考慮してのことです。しかし最近では、欧米で行われたいくつかの大規模な調査で、血圧が高くなるほど、心脈管系の合併症の危険が増し、加齢とともに脳や心臓の事故が増えることが明らかになりました。そのため、老人の収縮期血圧は160以下ぐらいまでコントロールしたほうがよいといわれます。しばらく家庭で血圧を測り、記録したものを示して、医師と相談し、このまま様子をみるか薬を飲むかを決めるとよいでしょう。
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